父の13回忌のため、数年ぶりに実家に帰りました。
かしこまって儀式的なことはせず、簡単な食事で談笑・近況報告して来ました。
実家に帰る際は、毎度違った経路・道を通って行くようにしています。
どれほど街並みが様変わりしたのか確認するためです。
馴染みのある建物は古ぼけてしまい、馴染みのない新たな建物が増え、実家のある下町でさえ絶えず新陳代謝が行われています。
妹が連れて来た下の子供二人も、すっかり大きく成長して小さい頃の面影がわずかに残る程度でした。
そんな時大人が決まって口にするのが、
「ずいぶん大きくなったねぇ。」という言葉でしょう。
私も例に漏れず、思わず口にしてしまいました。
もう少し気の利いたセリフが言えれば、子供達も返す言葉が見つかるでしょうが、これを言われたらなんと答えればいいのか困ってしまうでしょう。 自分の子供時代を思い返せば分かるように、大人たちが揃いも揃って皆「大きくなったねぇ。」と言いますが、自分はなんと答えていいか分からず、「はあ。」とか「そうですか。」と言うのがやっとだった気がします。
お互いの近況報告も一段落すると、話題の合間をぬって私は外へ出て一服することにしました。
ニコチンを補給していると、家の前の路地を向こうから一人の女性が近づいて来ました。
10メートルほどまで接近したところで、彼女が会釈して初めて隣家の娘さんだと気づきました。
間髪を入れず思わず口にした言葉が、
「ずいぶん大きくなったねぇ。」でした。
すると彼女は、
「いい加減、いい歳ですから。」と微笑んで自宅に入って行きました。
お隣さんのお嬢さんを見かけるのは、実に二十数年ぶりくらいではないでしょうか。私の記憶の中では、まだ子供の姿でした。
タバコを吸い終え、たった今あった出来事を話して分かったことは、お隣のお嬢さんは、もう40歳くらいになるとのことでした。
事もあろうに、40代の女性に向かって「大きくなったねぇ。」はないだろう、と思わず自分自身に向かってツッコミを入れてしまいました。
逆を言えば、自分もそれだけ歳をとっているということなんですね。
歳をとらないのは頭の中の記憶だけです。
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